ステッドラーの 787 芯ホルダーで『芯ホルダー』名称考察 / STAEDTLER 787 MARS-PAN-TECHNICO LEAD HOLDER
ステッドラーの芯ホルダー 787 です。
LEAD HOLDER
STAEDTLER 787 MARS-PAN-TECHNICO
現行のラインナップからは ずいぶん前に落ちています。
製造年代は不明ですがただひとつ、標準装備の2mm芯に現行品のような縦溝が入っていないのが手掛かり。
ちなみに、現行のステッドラーのカラー芯以外の2mm芯は、真円ではなく縦溝が入っています。主たる目的は ホルダーに噛ませたまま芯削りで先端を尖らせる時に芯が回転してしまわないように。
替え芯のケースが現行のデザインになった時に、芯も変更されたハズです。(←逆か?)
かなりアバウトですが、1980年代初頭だったか と。83年には既に変更されていた と記憶しています。
この787は、そのあたりから80年代半ば頃にラインナップ落ちしたのでは と考えられます。
(間違いがありましたらご指摘いただければ幸いです。)
銀色のノックキャップは一見チープな樹脂製にも見えますが、スチール製の削り出しにエングローブのライン入り と、なかなか豪華です。簡易芯削り機能なし。
ステッドラーブルーの樹脂軸は 名作780C の独特の質感とは異なりややプラスチッキー。応力で割れやすいか?
軸は780Cや788Cより太く、全長も長い。
主軸の面取りを施していないので、細い線を引く時に軸を回転させながら線幅を一定に保つ製図の基本的な手法が使えない。
(ローレットとの境界部分は円柱を保っている。わずかにこのスペースでは可能。そこからやや太くなりながら6角柱に移行し、細くなりながら真円で収束する。)
製作者の意図は、製図用途よりも、太めの芯を長めに繰り出してのデッサン向けか?
にしては、軸が長い気がするが、4Bなどの軟らかい芯が入ったものしか見た事がないので、やはりデッサン向けと考えています。
(私は、デッサンは描かないので、感覚的にはわかりません。)
これにはクリップがないので、私的には持ち歩きはしません。着けようと思えば着ける事は出来ますが、まぁ しっくりこないので。
えい出版の ステーショナリー マガジン No.005 の P85
『76年のカタログ』の写真に載っていました。
文具関連の書籍で目に触れるものはなるべくゲットしてチェックしていますが、この 787 はそれまで見かけませんでした。
全て というワケにはいかないのは勿論ですが、といって webでコレを調べた事もないし、さりとて 大した情報を持っているわけでもありません。
ちなみに、私的にはブログに上げてからググったりしている事が多いです。
机上に転がっていて見慣れてしまったモノが、媒体を通してあらためて眺めてみると、時になぜかテンションが上がったりします。
さてこの 787 ですが そもそも、『PAN』 とは何を意味するのか?
ステッドラーの『マルス』 は、ローマ神話の軍神『マルス』である事はここに記すまでもなく有名ですね。
では、『PAN』は?
● [名]【ギ神】パン,牧神[山野・牧羊の神]
これはあり得ない。いくらギリシャ神話とローマ神話のルーツが同じでも、これを並べるのは…
● peroxyacetyl nitrate ; polyacrylonitrile
これはなくはないか?
peroxyacetyl nitrate
硝酸過酸化アセチル
polyacrylonitrile
[名]【化】ポリアクリロニトリル[炭素繊維の一種]
軸素材の一部? ではないですねぇ。
● 「全…,総…」の意
これかな?
全ての TECHNICOシリーズ のなかの 『マルス』かな? 男の中の男 みたいな。
とすると、名前がスゴいですな。
ステッドラーの稀代の名作となり、ステッドラーの代名詞ともいえる 【780C MARS-TECHNICO】を越えようというネーミングなのか?
確かに、参考文献にもある通り、この芯ホルダーのクラッチは、今ではほぼ標準的な太さの 2mm芯から、3.15mm芯までホールドする(らしい。私は.2mm芯しか使わず、3.15mmの芯を所有していない。)
これは 780C には無い機能だ。
ある意味 越えている。
ステッドラーの型番が、単純に開発順の番号かどうかは不明です。
780C と 788C は現代まで残りましたが、787 は残念ながら消えてしまいました。
さて、本題。
【芯ホルダー】とは良いネーミングだ。
類するものに【クラッチペンシル】という呼び名があるが、適切ではないと思う。
記録を残す為に書く道具は実はあくまで【芯】であり、【ホルダー】はそれをホールドする脇役だ。
万年筆も書くための道具だが、本当の主役は【インク】だ。軸に懲りすぎるのは主客転倒と言わざるを得ない。
でも凝りたくなるのよねぇ。。。
ちなみに私はこの芯ホルダー 787 の、やや大きめのクラッチ先端部分の形状が好きだったりする。
参考文献
ステーショナリー マガジン No.005
エイムック1735
P84〜85
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はじめまして。今780を使っていて787すごく欲しいのですが紹介されているクリップのない明るい青の787と紺色でクリップの有る787を見かけますがこの違いはご存知でしょうか?
そこら辺の記事が見つけられず気になってしょうがなくコメントさせて頂きました…
ご存知でしたら教えて頂けませんでしょうか…
投稿: ゆーき | 2020年9月16日 (水) 18時42分
>ゆーきさま
コメントに気付かず、放置してしまい大変に申し訳ありませんでした。
結論を申し上げると、明るい青すなわちステッドラーブルーのクリップの無いモデルが前期
紺色のクリップありモデルが後期型のハズです。
あとで追記致します。
投稿: Hagy | 2020年10月 9日 (金) 07時37分
軸に刻まれたシルバーの文字列を見てみましょう。
私の 787 は
787 MARS-PAN-TECHNICO
とハイフンがありますね。
裏面に
マルスのロゴ STAEDTLER GERMANY
とあります。
2面に分けるとコストがかかりますね。
旧き良き時代っぽいです。
比較する紺色のクリップあり モデルは
マルスロゴ STAEDTLER MARS PANTECHNICO 787
とあります。1面で完結しています。
コストカットの波が。
では、デザインとして どちらが洗練されていますか?
後者ですね。洗練されている方が新しいモデルです。
787 の型番が文字列の最後に記されているのは現行モデルと同じですね。
マルス神の意匠も違いがありますね。
これが決定的に新旧をあらわしています。
ゆーき さま
787 との良き出会いがありますように。STAEDTLER の 芯ホルダーは一生モノです。
投稿: Hagy | 2020年10月 9日 (金) 23時07分