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2010年4月25日 (日)

パイロット エラボー (旧) / 『日本を代表する3社のどの万年筆を選ぶか』シリーズその8 パイロット編4

パイロット エラボー (旧) / 『日本を代表する3社のどの万年筆を選ぶか』シリーズその3 パイロット編4


このシリーズはまだしばらく続きます。

特別編

PILOT Elabo
パイロット エラボー
旧タイプ。

なんとも冴えない名前ですねぇ。。。

これは新型エラボーの発売頃までにはエントリしようと思っていたのですが、なんともインプレッションに困って、今ごろになってしまいました。

…イマイチすっきりしない。

この万年筆はバランスが悪いのかな。もう少し重い方が良い気がします。

ある日 とある文具店でいつもの様にガラスケースの中の万年筆を掘り出し…もとい 見ていました。
薄暗い店内で見かけないクリップの万年筆をつまみ上げ、キャップを抜いて思わず声を上げてしまいました。

「これって 『エラボー』でないの。」

おそらく2代目と思われる店主様は、その名を知らないようでした。
それから小一時間。
いつの間にか3対1で戦って(゜_゜)☆\ぽか
文具話しの花が咲いていました。

これが、長いこと探していた『エラボー』との出会い。
(別の店でSMニブを見つけたのですが、この時は他のモノで手一杯で、スルー。まだ残っているかな。)

「エラボー」の名の由来は、最早有名ですが念のため。
「Elaborate」と「選ぼう」との造語といわれています。

誕生までのエピソードも有名なので割愛。

まずは、クリップ。
このエラボーの為に専用金型を起こしたようで、エラボーオリジナル。
他のモデルへの流用は見かけません。(私は知りません。)
この長刀のようなクリップは非常に良く出来ています。

胸ポケット携帯派の私にはクリップの出来は非常に大事な要素。
ポケットへの抜き挿しは合格点。
天冠付近の付け根部分の肩が張り出しているところが特徴的。抜く時にも つまみやすい。
角を落としたデザインはシャープな印象を与えます。
カタチも綺麗。

まず、このクリップでコストアップ。

キャップリングは2本。
太い方のキャップリングの細工は、目立たないですが意外に手の込んだ造り。
これも意外にコスト高。
全身をすっきり見せる為にでしょう。キャップに嵌め込んで、ツライチのスタイル。
残念なのは、手間の掛かる造りのワリにはチープに映ります。
…豪華なクリップとのバランスが取れていない。

キャップは嵌合式。

パイロットはキャップの嵌合方式をさまざまに工夫しており、ここにはパイロットというメーカーの良心を感じます。

このエラボーの嵌合方式を『板バネ クリックストップ嵌合式』と私は勝手に呼んでいます。
キャップ内の軟らかめの板バネが首軸をやさしくフォローし、(ペン先が内部に引っかかってキズになるのを防ぐ。)
首軸と胴軸との接合部近くに金属製のリングを仕込んで、キャップの内側の凹みにフックさせて「パチン」と止まります。
(一般的に、嵌合式=クリックストップ式 となっているようですが、
『嵌合』と『Click Stop』では意味が違います。)

パイロットのこの方式(正式名称は不明)は剛性が非常にしっかりしており、金属製キャップと樹脂製の首軸という強度の全く違う素材をも永年に渡りしっかりとつなぎ止めます。ヘタリも少ない。
このあたりの工作精度はパイロットの技術力の高さを見せつけます。

しかしエラボーにおいては、キャップは樹脂製です。
しっかり嵌まるのですが、『Click』がしっかりしすぎて、いつかキャップが割れるのでは と感じられてしまいます。削れてゆくような感覚も。

この『板バネ クリックストップ嵌合式』の高い強度・精度と エラボーの駆体の質感がアンバランスで裏目かな。

エラボーに足りないのは、軸素材の重量も含めた質感でありましょう。

70年代の国産の筆記具は、輸入品と比べて、軸の素材 特に樹脂の質の高さが非常に優れていると私は思っています。
肉厚で重量感があり、持った瞬間に指先がこれを好ましく感じます。
万年筆では最もブランド力のあるあのメーカーの同時代の競合製品は、価額が上でありながら、駆体の肉厚が足りないし質感も不足している。
(国産のメーカーはこぞってこれらを目標にしてきたのでしょうから、これより上を行かなくてはならないという必然があるワケですが。)
樹脂の厚みが足りない。組成は不明だが、樹脂の質も廉価版とはいえ あまりに質を落とし過ぎ。
従って、クリップの付け根にヒビが入り 首軸は2箇所で割れ、クラックからインク漏れが起こる。

(実際、筆者の少ない経験だけではなく、あるビンテージ専門店の店主様に、自分の所有する『あれら』の話を聞いた事がある。
話しの流れの中で、『あれは、ココとココとココが弱い。』と弱点を指摘された。私が見てきたトラブルと一緒だった。
同じ箇所に同じトラブル頻発とは致命的ではないか。普通のメーカーなら。)

パイロット エラボー (旧) / 『日本を代表する3社のどの万年筆を選ぶか』シリーズその3 パイロット編4気を取り直して、

輸出モデル名はご存知「ファルコン」
そう呼ばれる所以のペン先。
比類なきプロポーション。

このペン先の刻印は

PILOT
14K-585
<S・F>
JAPAN

であります。

この時期には PILOT のペン先にはほとんど刻んである製造年月の刻印がありません。
これは異質であります。
理由をあれこれ妄想してしまいます。

ニブはパイロットらしくインクフローが良く、非常に書きやすい。
この世代のパイロットの万年筆のFニブでは描線が不安定な個体にしばしば出会っています。
私にはあまり良い印象がありません。

しかし、この「エラボー」は描線が安定しており、非常に好感が持てます。

ペンポイントの研ぎの形状はすでに確立されていたようで、現在のパイロットのペンポイントと同じ形状。
この形状と私の筆記角が合うようで 私とは相性が良い。

巷間(…といっても狭いが…)語られているエラボーの「軟らかいペン先」だが、
「硬さを感じさせないペン先」程度では ある。と言える。
特別に軟らかいペン先とは感じられない。

このニブは <SM> か <SB> が良い気がする。

首軸から張り出しているペン先の長さは相当長く感じられる。
測ってみると、首軸から出ている部分は18mm程である。
カスタムのニブが17mm
カスタム74の5号ニブが19.5mmなので、実はそれほど長すぎではない。

首軸が細いのでペン先が長く感じられる?

ペン先の形状として、上から覆いかぶさってくるペン先のカタチにはなかなか馴れない。私の好みではない。
しかし、書き易い。

パイロット エラボー (旧) / 『日本を代表する3社のどの万年筆を選ぶか』シリーズその3 パイロット編4最初期モデルではペン芯に漆が塗られていたというのもすでに有名。
コストカットの為に、後期はペン芯の裏の 漆 は廃止されたようです。
私の所有するエラボーには初めから漆が塗られていませんでした。
という事から、初期型の後期モデルのようです。

こうしてみると、エラボー出生までのやり取りが想像できたりします。
正しいかどうかはわかりませんがね。

木をみて森を見ず。 といったところでしょうか。
ポイントに色々良いモノを投入しながら、全体の出来はちぐはぐな感じがします。

パイロットらしくないですね。

このモデルをベースに、キャップが回転スクリュー式となり、首軸・胴軸が太くなり、ペン先の形状に改良を加え、輸出モデル『ナミキ・ファルコン』となるようです。

そして今年、新型エラボーが発売されました。
軸は金属製で重くなり、この特別なペン先の良さを引き出せそうに見えます。
(といっても、全く同じニブではないでしょうが。)

ペン先はやはりSMニブあたりが良さそうな気配。

先行されているブログでは なぜかほとんど触れられていない事。

・胴軸に刻印
首軸近くの裏側に6桁の数字あり。
焼印で刻んであります。
パイロットの万年筆の昔のモデルでは軸の裏側に型番が刻まれているのをしばしば見かけます。

使用インクは純正のブルーブラック。
でしたが、最近の黒インク使用テストで黒インクも良いものだと見直して、黒インクに。
軸の軽さをフォローする為にコンバータ CON-50 を装着。

嫌いではないのだが、酷評になってしまいました。

私の使用環境で、活躍できるポジションを見つけから、再評価しましょう。

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コメント

TBありがとうございました。
おめでとうございます。
よく保護できましたね。
ペンが柔らかいので書き味はなめらかで良いです。

旬を過ぎてしまいましたがTBさせていただきました。
コメント ありがとうございます。
エントリ迄に随分と日数がかかってしまいましたが(汗)


>書き味はなめらか
まさに「なめらか」ですね。ぴったりの表現ですね。
ペン先にクッと力を掛けると、怖い位しなりますね。
そうやって使うとダメになってしまうので注意が必要ですね。

この記事へのコメントは終了しました。

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